番外編コラム~TONG/チェリータイムス~


2019.9.28 ティッシュタイム66 ~オナニーマシーンのライブを観た感想文~ (TONG/チェリータイムス)

この連載、イノマーが癌の通院で忙しくって書くヒマないってことで、今回は私に白羽の矢が立ったのだけど、読んでる人からしたら「お前誰だよ?!」っていうね。

だよね。

説明すると、2002年に発売された2nd アルバム『彼女ボシュー』のジャケットの女の子を描いたのが私です。

当時20歳。そして、その後サンボマスターとのスプリット『放課後の性春』から3枚連続で2004年にリリースされたアルバムまでジャケットイラストを担当してました。あと、今は無きファンクラブの会報や、イノマーがやってたレーベルの新聞みたいなものの編集やらライティングやらもやってました。さらに『ティッシュタイム』に行ったことある人は見たことあると思うけど、あのイベント名の入った赤いステージフラッグというのか? とにかく、ステージの壁にガムテープでガチガチに貼ってあるデカイ布な。あれを手描きで作ったのも、何を隠そう私である。懐かしい。仕事の未熟さが恥ずかしい。でも、15年以上経っても使ってくれててとても嬉しかった。

そんでもって、当時の私は毎回ライブ動画の撮影もしていた。ハッキリとは覚えてないけど、たぶん4~5年ぐらいかな。毎回ライブのたびに、なにか使う予定があるわけでもないライブ動画を欠かさず撮らされていた。ま、そのおかげで、その間のすべてのライブを観ることができたし、バンドと共有した時間が長かったので、私にとってオナマシ周辺は今でも実家のような安心感がある。そんなこんなで、私の20代前半はオナニーマシーンというバンドと共に思い出される。私が生きるうえで重要な指針がそこで決まってしまった。

現在37歳。既婚。1歳児の母である。

なんか娘が可哀想だね。そんな母。ふふふ。ということでね、かなりのブランクを経て、またこういう場所でオナニーマシーンと関わる機会をくれたマネージャーのタカシくんに感謝。前置きが長くなったが、私はつい先日 <2019年9月28日(土)> に渋谷ラママで行われた『ティッシュタイム66』のライブレポートを書きたいと思っています。

 

書きたいと思っています。

が、その前に。なかなか本題に入らなくて悪いんだけども。

『ティッシュタイム66』で渡辺美里の腹式呼吸による美声(SE)の中、ステージに登場するまでの1年間、私はイノマーに会ってなかった。その前に会ったのは2018年9月にあった『=手術直前SPお医者さんには内緒でね=「緊急真昼無料!ティッシュタイム~“イノマー現形態”ラスト・ライブ」』のとき。でも、ライブは観れてない。産まれて間もない娘を抱えてたので。しかし、とにかく癌が発覚したイノマーに会いたいと思ってラママ付近へ行き、外の道路で立ち話をした。懐かしい仲間もいっぱい集まっていた。

それから1年。イノマーは手術をして舌がなくなって、リハビリをして、転移が見つかり、抗がん剤の治療をして、顔の右半分が腫れて目が見えなくなり、杖をついて歩いてて、顎に穴があき(?!)、癌が日々赤ちゃんを増やしている(?!?!)と言うじゃないか。ハッキリ言ってどういう状態なのか見当もつかず、姿を見ることに緊張していた。だってそうじゃない? どういうこと?! じゃない? 覚悟の仕方も分からないぐらい、想像をはるかに上回ってくる文字からの情報(イノマーのブログ参照)。 SEが流れている時めちゃくちゃドキドキしたし、ちょっと怖かった。そしてSEが長い。全然出てこない。15年前と同じだ。ドキドキドキドキ…。したら、これまた15年前とほとんど同じ見た目のガンガンとオノチンがスタスタと登場して、そのあとヨボヨボになったイノマーが登場した。

顔は腫れてるし、眼帯をしてて、顎にもなんかガーゼみたいなのを貼っつけている。マイクのとこまで行ってなんか話してるけど半分ぐらい何を言ってるか分からない。めちゃくちゃ明るいライトに照らされた癌患者兼障がい者がステージにいた。 お客さんは話しているイノマーの声を一生懸命に聞き取ろうと静かにジッと集中している。固唾を吞むってこのことだ。所々「タクシー」とか「電車」とか「ここまで」とか単語が聞き取れる。どうやら「ここまで来るのに電車がムリで、タクシーで来たような人間がライブするっておかしいだろ!」みたいなことを言ったっぽい。会場ややウケ。そりゃそうだ。おそらく半分ぐらいの人には何を言ってるのか伝わってない。

ほどなくして1曲目が始まった。オノチンの歪んだギターと、ガンガンのタイトなドラムと、イノマーの少し高い声とシンプルなベースが鳴って、ステージが一気にキラキラし始める。最初の30秒くらいは、それでもやっぱり心配だった。大丈夫なのか? 大丈夫じゃないよね? 誰がどう見ても立ってるのがやっとなのに、重たいベースを担いでフラフラしながら顔パンパンでデカイ声を出して…。

オノチンとガンガンは15年前と同じ姿で、同じ立ち振る舞いで演奏している。うむむむむ。泣きそうだ。泣こうと思えばいつでも泣ける。なんてこった! うううーーー。イノマー大変じゃん! マジで死にそうじゃんかよおおお!って。

でもさー。すごいんだよ。

1分も経たないうちに心配はすっかりどっかにぶっ飛んでて「あー! オナマシってこうだったわ~! ギャハハハ!くっだらねぇ~!」って、私ステージを指差してゲラゲラ笑ってたの。

イノマーが命を削って言ってんのチンポかよ!って。バカじゃないの?!って。チョー面白いじゃん!ってなったの。もうね、曲と曲の間にベースを置いて、しゃがみこんで酸素吸引してるイノマーが放つ「シューシューシュー」って音すら面白いし、舌がないイノマーが一生懸命しゃべってるのに、いつも通りどうでもいい話で邪魔するオノチンとか腹を抱えて笑ったし、そのどうでもいい話のオチのとこでガンガンがシンバルをチキチキって鳴らすのとか、とにかくツッコミどころ(?)満載なの。歌詞もあんまり聞き取れないんだけど「チンポ」とか「マンコ」とか「オナニー」とか、下品な言葉だけはやたらハッキリと聴こえるし、ホントにバカバカしくて最高。最後にはイノマーがベースをチューニングしてるのすら笑えてきちゃって、私どうかしちゃったのでは?って思うけど、癌で死にそうなのにチューニングしてるよ!ゲラゲラゲラ!って笑いが止まらない。

ホントに15秒に1回とかのペースでここには書ききれないぐらい面白いことが次々に起きて、それと同時にお客さんもドンドン盛り上がっていって、ちゃんとみんな音楽を楽しんでるのが分かる。モッシュが起きて、MCのときに野次が飛んで、笑い声も聞こえる。あの会場にいた人たちみんな、たぶんイノマーが癌で死にそうってこと忘れてた瞬間がたくさんあったはず。ホントすごいことだし、ライブめちゃくちゃ楽しかった。あと、イノマーが笑ってんの最高なんだよね。オノチンが無茶をやってるの見て、あの小学生が悪さするときみたいな「ヒヒヒッ」っていう照れたような笑い方ね。15年前と同じだよ。

こんな解説するのはものすっごく野暮だし、とくにこういうバンドの場合は絶対にしちゃいけないんだろうと思うけどさ。どうしても書きたいから書いちゃうんだけど。

あの人たち今まで散々「30代も後半なのに~」とか「42歳の厄年なのに~」とか「オノチンなんてオバマ大統領と同い年で~」「チン毛に白髪が生えてきて〜」とかそういうフリでさ、いい大人なのにくだらないことやってるってことを見せてきたわけ。くだらないことをギリギリの状態でも本気でやるってことを、裸で這いずり回ってやってきた板の上の芸人なのよ。いや、バンドマンなんだけどさ。そういう板の上に立つ人間って意味の芸人ね。板っつーのはステージね。芸という名の生き様を見せて金をもらうって意味の芸人。その芸の種類が音楽で、形態がバンドっていう大きな意味でのやつね。 そういう、いい大人が~って前フリ散々して、全裸でくだらないことをやって、転がり回って人を笑わせたり感動させたりってのを20年間もやってきたんだよ。そこには、常人には理解できないイカれた意地とかプライドがあるわけなんだけど。だから、あんなんなってもライブやってんだけど。んでさ、癌で舌がなくなって死にそうなのに~ってさ、これ以上のフリこの世になくない? イノマーの今の状態で人前に立って、お客さんを笑わせて踊らせてるって比喩じゃなくて唯一無二だよ。

もうね、今のオナニーマシーンは無敵。

誰も勝てない。オナニー無双マシーン。チンポはもう立たないって言ってたけど、ステージに立ってるだけで成立しちゃうんだもん。

もう全部言っちゃうけど、癌で死にそうな人がステージに立ってるのがすごいって話じゃなくてさ。癌で死にそうなのにステージに立ってて、意味ないことしか歌ってなくて、それ観てる人が笑えるってことがすごいの。

笑えないよ普通。

彼らの20年がそういう状況を作り上げてて、ホント異常だけどめちゃくちゃ最高で奇跡だよ。

だから、今の完全無双状態のオナニーマシーンのライブ、絶対に観た方がいいよって思う。

とりあえず豊洲でね。

生きろ!イノマー!

(TONG/チェリータイムス)